妊娠中・妊娠前の肥満、
赤ちゃんへの影響と出産時のリスク

妊娠前は、肥満でも痩せすぎでもない適正体重が理想です。肥満の状態で妊娠すると、妊娠中毒症などの発症リスクや出産時のリスクが高まると言われています。妊娠中の減量については赤ちゃんへの影響がありますので慎重な対応が必要です。

肥満の人が妊娠した場合の病気リスク

体重を適正に管理するうえで、参考となる指標の一つにBMIがあります。妊婦でもそうでなくとも、肥満度を測る際はBMIという指標を使うのが一般的です。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]の計算式で求めることができます。日本では、日本肥満学会の定めた基準にもとづいて、一般の人はBMI25以上で肥満と考えられています。
妊産婦においてはある程度の体重増加が見込まれますし、母体の代謝の変化や赤ちゃんの発育に十分な栄養を供給する観点から栄養状態を適切に評価する必要があります。そのため日本産科婦人科学会栄養問題委員会では、肥満妊婦の基準を、非妊娠時あるいは妊娠初期でBMI24以上、妊娠中期でBMI26以上、としています。

肥満の人が妊娠した時に考えられる病気リスクとは

通常、BMIが25を超えると、糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になるとされています。肥満の人が妊娠した場合も、妊婦糖尿病や妊婦高血圧症候群(妊娠中毒症)などの病気のリスクが高まる恐れがありますので、妊娠前から適正な体重を保つことが望まれます。

妊娠前後の肥満や体重増加が赤ちゃんに与える影響

妊娠前後の肥満は、お腹の赤ちゃんにも影響します。
肥満の人が妊娠すると、巨大児分娩のリスクや、子供の神経管閉鎖障害などのリスクが懸念されるほか、出産時にも緊急帝王切開、分娩後大量出血や死産のリスクが高い傾向にあると考えられています。また、赤ちゃんの出生体重に関しては、妊娠中の母体の体重増加量が多いほど重くなる傾向がありますが、肥満の人が妊娠した場合は、妊娠前の肥満の度合いのほうが、妊娠中の体重増加量よりも出生体重に影響するという傾向もあります。
母体や赤ちゃんへのリスクを軽減するには、妊娠前から適正体重を保つことに加えて、妊娠後は産婦人科医の指導のもとで、適度な体重増加を目指すことが大切です。

肥満で妊娠した場合の、妊娠中の体重増加量は?

妊娠全期間を通しての適正体重増加量については、国によっても見解が異なりますが、日本では、厚生労働省「健やか親子21」推進検討会が、妊娠前の体格を「低体重(やせ):BMI18.5未満」「ふつう:BMI18.5以上25未満」「肥満:BMI25以上」の3つに分けて推奨体重増加量を示しています。それによると、低体重の人は9〜12kgで、ふつうの人は7〜12kgですが、肥満の人については個別対応となりますので、自分で判断せず医師の指導に従う必要があります。それと同時に、BMI25をやや超える程度の肥満、つまり、限りなくふつうに近い場合の推奨体重増加量は、妊娠全期間を通しておおよそ5kgを目安にするとしています。

妊娠中の体重制限やダイエットにも注意が必要

肥満で妊娠することによるリスクを減らすことは大切ですが、妊娠前に過度なダイエットをしたり、妊娠期に過度な体重制限をしたりすることは好ましくありません。その結果、赤ちゃんの発育に必要な栄養素が足りなくなり、低出生体重児を出産するリスクが高くなります。これは肥満傾向のある妊婦も例外ではなく、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を発症した場合もその影響でお腹の赤ちゃんが十分に発達できず、結果的に低出生体重児が生まれる可能性が高まります。出生体重が低い子供は、大人になってからメタボリックシンドロームを発症するリスクが高まることも分かっています。
また、母乳の脂肪は赤ちゃんにエネルギーや栄養素を供給するために重要ですが、その脂肪濃度は、妊娠中のBMIや授乳期以前に蓄えられた脂肪と強い関連があります。そうした観点からも、妊娠中の体重制限については慎重に捉えるべきでしょう。

まとめ

肥満の状態で妊娠すると、妊娠期の病気や分娩異常などのリスクが高まる恐れがありますが、やせすぎていてもリスクはあるため、良くありません。妊娠前からバランスのとれた食生活を心がけ、体重を適正に保ちましょう。妊娠期や授乳期には、赤ちゃんの発育にかかせないエネルギーも食事からとる必要があるため、主食を中心に、とくにごはんから炭水化物やたんぱく質をしっかりととりながら、適度な体重増加を目指します。妊産婦の体重コントロールに関しては、妊娠前の体格、妊娠初期のつわりの状況などが個別に考慮されますので、産婦人科で相談のうえ、適切に行うことが重要です。