近視は遺伝する?子供の近視と大人の近視の違い
近視はそのほとんどが病的なものではありませんが、子供の頃から成長期が終わるまで進行しやすいため、どのように予防するかが課題となっています。近視が進む原因はよく言われる遺伝なのか、それとも他に原因があるのでしょうか。
老眼とは? 子供の近視の原因は遺伝?
公益社団法人日本眼科医会は、子供が近視になる原因について2種類の要素が関係していると言います。
それは、「遺伝的な要素」と「環境的な要素」です。
近視の原因は未だはっきりと解明されてはいないものの、両親ともに近視である子供は片親が近視である子供や両親ともに近視ではない子供と比べると近視になる確率が高いという報告があるそうです。
子供の近視は、環境的な要素の影響が大きいという説もありますが、親からの遺伝による影響もあるため、両親、または、いずれかの親が近視の場合、子供の近視には注意を払っておくのも、早めに気づけ対応できるのでよいでしょう。
大人の近視との違いは?
小児における近視は成長が止まるまで進行するケースが多くみられると言われています。公益社団法人日本眼科医会によると、子供が近視になる原因のひとつは、目の屈折状態を左右する眼軸の長さ・角膜や水晶体の屈折力が成長とともに変化するというところにあるのだそうです。
また、読書時のしかめ面、過度の瞬目(まばたき)、目をこするといった行為がみられることが小児期の近視で見られるという報告も存在します。
子供の近視予防と治療の方法
子供の近視を予防することは、医学的な見地からも大変重要な課題とされています。
学童期に近視を患うことによって懸念されるのは、視力が下がったために生活の質の低下を招いてしまうことや将来各種眼疾患を発症することです。
これらを未然に防ぐためには、近視の進行スピードが速い子供のうちに何らかの対策を取っておくことが有効と考えられます。
予防法
公益財団法人日本眼科学会は「読書や書字を行う際に正しい姿勢で十分な視距離をとること、晴天時には屋外活動をすること」が、近視の進行を遅らせるうえで有効であるとしています。
こういった予防方法は、子供における近視の発症・進行の原因とされている“環境的な要素”をできるだけ取り除こうとする試みと考えられます。
治療法
現在近視に対して行われている治療方法には、器具による矯正や、薬物療法があります。
眼鏡やコンタクトレンズなどの器具を使った治療方法は一般的ですが、注意すべきなのは、「視力の矯正に用いる眼鏡・ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズはそれぞれ特徴や各個人との相性が異なる」という点です。
特にコンタクトレンズに関しては装用時間の考慮や専用のレンズケアなどが必要となるため、レンズ自体やケア用品の取り扱いをよく理解して自己管理ができるようになる中学生以上になってから使用することが望ましいとする眼科医もいます。
薬物療法では眼軸長が伸びることを抑制することなどの作用で近視の進行を予防する点眼液があります。
眼鏡をかけ始めると近視はより進む?
一方、眼鏡については「近視がどの程度進行した段階で作ることが適切なのか」という問題もあります。
ある眼科医は、「日常生活に不自由を感じる場合、または生活上不便を感じていなくても視力が0.3以下である場合」であれば眼鏡の作成を勧めていると言います。
眼鏡に対して多くの人が持つもうひとつの疑問として、「眼鏡をかけ始めること、あるいは着脱することで近視が進むのではないか」というものがあります。
この件に関しては、下記のような研究結果が報告されています。
・眼鏡の装用頻度別に分けた4グループ、また、眼鏡の装用頻度およびレンズの種類別に分けた3グループ、それぞれについて3年間の観察を行った結果、いずれのグループを比較しても近視の度に変化は見られなかった。
この報告から、「眼鏡をかけ始めることや着脱を行うことは近視の進行に影響を与えないようである」ということがいえます。
しかし、近視を過度に矯正する眼鏡を装用していると近視の進行を進めるという報告もあるので、眼鏡を用いた治療については医師との相談や十分な経過観察が必要であると言えそうです。
まとめ
ほとんどの近視は疾患には当たらないため、深刻になる必要はないという話もあります。
しかし、幼稚園児や小学生などの幼児・児童期から近視が確認される人が多数いることも事実です。そのため、大人は子供の見せる徴候や症状などに注意をはらい、近視の原因となる環境的要因の排除・医療機関の適切な受診などの手助けをしてあげることが必要と言えるでしょう。